駿河城御前試合
白砂、血の海と化し 剣士凡て斃る
- 作者: 南条範夫
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1983/04
- メディア: 文庫
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江戸初期、御三家の一つ徳川忠長のお膝元で行われた凄惨な真剣勝負11番。
8組が相手を切り殺し、残り3組が相打ちとなったこの戦いは何故起こったのか、そしてその結末は。
11本の短編で構成される。
仮定する。
長年思い続けてきた女が見ず知らずの男と結婚するとする。
さらに、自分が剣技を極めたものすごい達人でその男なんぞ瞬殺できるとする。
最後に、その男を殺しても罪にはならないという『国』が認めた場所があるとする。
さて人間どうするか、御前試合に参戦するものたちは、仕合の起こる前からこういった事態に直面している。
愛から意地から名誉から、
"相手を殺して己だけ"
そんな狂気に囚われた恐るべきツワモノが凶器を手に取り狂喜と供に果てていく。
無論、そんな者達ばかりでなく義を掲げた仇討ちのため参戦する者たち、狂気に呑まれたモノによって巻き込まれた形で仕合場に立つ者たちも居る、しかし、彼らに待つのは悲劇だけだ。
人間は爪も牙も持たないから獣から人に成ったという、ならば力という爪牙を得た人は獣へ還るのか。
チャンピオンREDで連載中、ちょっと前にアニメ化もした『シグルイ』は本書の第一話『無明逆流れ』のコミック化。
そこからポロロッカして読み始めたのだけど、コミック版の漫画的改変がすごいなぁ、面白いけれど。
シグルイがビジュアル的な殺し合いの描写が濃くなっているが、こちらはソコに至るまでの狂気の描写が魅力。
新当流の内輪もめから果し合いに発展した、11話『無惨卜伝流』は時代劇サスペンスとしての面もでてくる面白い話、変態性は低いけど僕はコレが一番楽しめた。
グロ耐性のある人はお勧め。